さみしがりやのホットミルク

「でもまだ、濡れてるよ」

「あ、オミくんおかえりー」



風呂を出て居間に戻ると、テレビを観ていた佳柄がこちらを振り返りながらそう声を掛けてくる。

俺は肩にかけたタオルでわさわさ髪を拭きながら、「おー、」と小さく返事をした。


……さっきも思ったけど、なぜ風呂上りで『おかえり』。

けど、『おかえり』なんて、久々に言われたから。なんだか少し、くすぐったく感じる。



「あ、そーだオミくん、おふとんそれ使ってねー」

「え?」



彼女の言葉に、目を向けてみると。俺が風呂に入っている間に準備してくれていたらしく、部屋の真ん中にあったテーブルがどかされ、ベッドの横にはシングルサイズのふとんが敷かれていた。

わかった、と呟いて、俺はそのふとんの上に腰をおろす。



「あ、それともオミくん、ベッドじゃないと寝れない派?」

「や、大丈夫。どこでもいい」

「そ? ならよかったー」



そんな応酬をしていたら、「はい、」と目の前に、ウーロン茶の入ったコップが差し出された。

礼を言いながらよく冷えたそれを受け取ると、佳柄は今度はタンスの前に向かう。



「あたしもお風呂入ろーっと。あ、ドライヤーはそこの勝手に使っていいからね」

「わかった」



彼女が指さしたのは、カラーボックスにはめ込まれた引き出し。

頷いた俺に微笑んで、彼女も洗面所の方に向かった。
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