ロスト・クロニクル~前編~

第四話 魔導研究会


 薄暗い室内に置かれた、ひとつの円卓。

 それを囲むように座っている人物は、皆まだ若かった。

 だがそれぞれの顔に浮かぶ表情は真剣で、発せられる雰囲気からもそれを感じ取れる。

「皆に集まってもらったのには、訳がある」

 沈黙を破るかのように、言葉が発せられた。

 その瞬間、一斉に言葉を発した人物に視線が集まる。

 そして、次の言葉を待った。

 言葉を発した若い男は視線を向ける一人一人を見回すと、重い口を開くかのように言葉を続けた。

 その発言に周囲がどよめき、互いの顔を見合す。

「ほ、本当ですか?」

「間違いない」

「そ、それでは」

「これで、我等の悲願が叶う」

「おお、夢にまで見たことが」

 その瞬間、歓声が辺りに響き渡った。

 椅子に腰掛けていた者達は一斉に立ち上がり、隣の者と喜びを分かち合う。

 だが男が発した言葉に、その歓声も一瞬にして静まり返ってしまう。

 そう“あれ”に対しての問題を解決しないといけず、それは世にも恐ろしいものといっていい。

「で、でも……」

「あれは、ちょっとな」

「怖いとしか、言いようがないし」

「そうだよ。俺は、死にたくない」

 集まった者達の弱気な発言に男は円卓を叩き、激を飛ばす。

 “あれ”の問題を何とかしなければ、先に進められないからだ。

 わかっていても、身体が動かない。

 それだけ“あれ”は、恐ろしい。

「会長はいいですよ、慣れていますから」

「そうですよ。噂によると、抵抗力が身についたというじゃないですか。それは、凄いことですよ」

「うーむ、そう言えばそんな気が……」

「では、会長がお願いします。これも、皆の為ですよ。ここで成功をしたら、会長は英雄です」

「え、英雄」

 その言葉に、会長と呼ばれた男が微かに反応を見せる。

 確かに英雄と呼ばれることは、悪くはない。

 しかし、やはり“あれ”は、怖いことには変わらない。

 だが周囲は一斉に盛り立て、会長がやるように促してくる。

 どうやら、嫌な役割を押し付けようとしているらしい。


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