極上ショコラ【短】
キスが、深くなる。


ねっとりという表現が相応しい口付けは、あたしの理性も心も奪っていく。


“キスに溺れる”という意味を、篠原に教えられた。


彼の作品に出て来るその表現をずっと理解出来ずにいた頃が嘘のように、今ではこうして我を忘れてしまうようなキスに陶酔している。


離れた唇に寂しさを感じるなんて間違っても言えないけど、心の中では『もっと』と訴えている自分がいた。


「せんせっ……」


「龍司」


「アッ……、りゅっ、じさ……」


窘めるように胸の頂きを噛んだ篠原を舌足らずに呼べば、彼は満足そうに瞳をゆるりと緩めた。


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