極上ショコラ【短】
「……もっと早く来い」


「すみません」


理不尽さを感じながらも謝ったのは、それが的確な判断だと思ったから。


「8時頃には来ると思ってたんだぞ。もう9時じゃねぇか」


メールを返さなかったくせに、という言葉は飲み込む。


「きっと原稿に追われているだろうと思ったので、あまり早く伺わない方がいいかと考えたんですけど……」


「そんなもん、とっくに上がってる」


「そうだったんですか」


「何だよ?原稿(ソレ)を取りに来たんじゃねぇのか?」


篠原は怪訝な顔を見せながら、長い足を二、三歩進めてあたしの元に来た。


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