極上ショコラ【短】
「雛子?」


パーティー会場に戻る途中、後ろから声を掛けられた。


無意識のうちに篠原を思い浮かべていたあたしは、振り返った直後に目を小さく見開いた。


「和也(カズヤ)……」


このホテルの制服に身を包んだ男性の名前を口にすると、彼が気まずそうにしながらも笑った。


「やっぱり雛子だったのか」


ゆっくりと歩み寄って来た和也は、かつてよく見せていた笑みを浮かべたけど…


「パーティー会場に入って行く姿を見掛けた時から、もしかしたらって思ったんだ」


普通に話し掛けて来る元恋人を、ただ呆然と見つめる事しか出来なかった。


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