極上ショコラ【短】
「……なぁ、雛子」


朦朧とする中、どこか不安げな声音の呼び掛けに視線だけで応える。


ゆるゆると腰を動かす篠原の律動は、さっきまでよりも遥かに緩やかだけど…


「好き、って言えよ」


既に数回昇り詰めているあたしには充分な刺激で、耳に届いた言葉を何とか理解するだけで精一杯だった。


どちらにしても、不器用なあたしは、この想いを声に出す勇気は無い。


「お前の口から、一度も聞いてねぇんだよ」


ただ、さっきよりも不安げな顔でピタリと動きを止めた篠原は、あたしを真っ直ぐ見つめていて…


その表情に、胸の奥が締め付けられた。


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