極上ショコラ【短】
奥深くに突き刺さった篠原自身に、とうとう声が引き攣った。


同時に再び喉が仰け反った事によって、視界が妖艶な笑みを捕らえる。


まるで美しい悪魔が醸し出しているかと思う程に艶やかな表情は、あたしの全てを奪おうとしているようだった。


「雛子」


数秒間ぶつかり合っていた瞳は、唇を塞がれた事によって交わらなくなる。


無理な体勢のせいで動けない体が悲鳴を上げ、呼吸までも奪い尽くすようなキスに息が上がり、水中にいる時のように苦しくて堪らないのに…


「雛子……」


自分(アタシ)を愛おしげに呼ぶ声音に、不覚にも胸の奥が高鳴った――…。


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