そのうち削除
座り込んでいたラグマットから立ち上がり、ふらりとキッチンへ向かう。
そこで、さっき食べた昼食の片づけをしている長身の彼の背後に立った。
180センチ弱あるという身長に、逆三角形で広い背中。
シンプルな服装で、バックから見るだけでもスタイルが良いってわかってしまう。
あらゆる武道をやっているからか、姿勢がすごくいい。
洗い物をするために捲り上げられた袖口からはほどよく筋肉のついた腕が見える。


なんだか引き付けられるように、私は彼の背中から抱き着いた。



「茅那?」


流し台に水が流れる音がする。
私の行動に一旦洗い物をする手をとめて、顔だけこちらを振り向く彼。


「ん~……」


猫がゴロゴロと喉を鳴らして甘えるような声で彼の背中に顔をうずめる。
ふらりと香るシトラスミントが鼻に届いて、ひとつ深呼吸をするとホッとした。


「どうした?」
「んー」


彼に問いかけられるが、温かい背中が気持ちよくて喋る気にならない。
生返事のみ返していたら私が話す気がないと思ったのか、中断していた洗い物をテキパキと済ませていく。




数分経った頃、水音が止んだ。


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