そのうち削除
片づけが終わったらしい彼は私の腕を掴むとベリッと引きはがす。
あー……まだくっついていたかったのに!
少しだけふて腐れていると。
そのままクルリと体の向きを変え、私と向き合う形をとった。
自分よりも頭ひとつ分以上高い位置にある彼の顔を見上げる。



「たか……んきゃっ!」


電話での話をしようかと思った時に、彼は右手の親指と人差し指で私の鼻を摘まんだ。
なんでこんなことを?


「たぁんかぁせぇく……ばなじて」


彼の行動が不思議で。
話す度に変な声が出るので鼻を解放してほしいと頼むが、彼は無表情で立っているだけ。
というか、呆れているような感じも受け取れる。
ジーッと見ていると。


「いっつも言ってるだろ。急に引っ付くな。動きにくいだろーが」


怒られた。
八岐大蛇とまでは言わないけれど、ちょっぴりお怒りのご様子だ。
そうですよね、何も言わずにいきなり抱きついて。
せっかく洗い物とかしてくれているのに邪魔したんだから。


「ご、ごめんなじゃい……」


素直に謝罪の言葉を述べると、ようやく鼻が解放される。
地味に痛かったです、はい。
たぶん赤くなってるはずだね。


< 4 / 11 >

この作品をシェア

pagetop