スイートホーム
「え?」


「それでも、戦わなくてはダメなんだ。自分の尊厳を守るために」


「え?え?」


突然の事態に頭が追い付かず、素頓狂な声を上げながら、おそらくとんでもない間抜け面になっているであろう私に視線を合わせ、小太刀さんは言葉を繋いだ。


「だけど、その戦い方にもコツがある。一人で苦しむ必要はない。俺達はまがりなりにも、その手助けができるよう訓練されているプロだから…」


そこで小太刀さんはふい、と視線を逸らした。


「ま、ようするに職業病だ。あんたが気にする必要はない」


言いながら、小太刀さんはいつの間にやら出来上がっていたコーヒーを取り出し、体の向きを変えるとその場から歩き出した。


「お休み」


「えっ?あ、ハイ」


慌てながら「おやすみなさい…」まで返答し終えた時には、すでに小太刀さんは数メートル先まで進んでいた。


そのまま足早に食堂を出て行く。


……びっくりした。


あんなにたくさんのボキャブラリーを駆使する小太刀さんを見るのなんて、初めての経験だったから。


えっと…。


今の話をまとめてみると、『俺達は修羅場に慣れてる』
『それでさっきはつい条件反射的に間に入ってしまった』
『俺が勝手にやった事だから気にするな』
って事で良いのかな?


我ながらエスパーにも程がある補完能力だけど。


でも、そういう事だよね。
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