スイートホーム
……やだ。


すっごく優しくて、温かい人だったんじゃない。小太刀さんて。


他人に興味がなくて人嫌いだと思い込み、勝手に苦手意識を持って接していたのが、今となってはすごく申し訳ない。


考えてみたら人嫌いな性格なら、よりにもよって他人と密接に関わらなくてはいけない、しかもその人の為に命を落とす危険性もあるボディーガードになんかなる訳がないもんね。


今までは、特別話す事がないからただ単に私との会話が続かなかっただけの事だ。


そして普段は多くを語らないけど、だからこそ、ここぞという時に発する言葉に、この上ない重みと説得力がある。


『過去に辛い思いをした人は、人の気持ちに敏感になるのかな』


ふと、数時間前の、加賀屋さんの呟きを思い出す。


その経験が小太刀さんをあそこまで成長させたというのなら、私も希望を持っていいのだろうか。


未だ胸の奥底で燻っている、彼女に対しての妬み嫉み嫌悪などの負の感情がキレイさっぱり吹き飛んで、心穏やかに過ごせるようになると。


過去のトラウマに縛られて、誰かを恨んで過ごす人生ではなく、はるか千里の先までも、何もかもお見通しの小太刀さんのように、誰かを救える人生を、私も歩めるようになるのだと。
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