スイートホーム
我ながらゲンキンなもので、あの食堂での一件以来、急激に小太刀さんへの親近感が沸き起こり、顔を合わせる度に積極的に挨拶をするようになった。


いや、今までももちろん声かけはきちんとしていたんだけれども、流れ作業的というか他の人のついでというか、とにかく義務感バリバリのおざなりなものだったと思う。


そしてこちらが変われば相手もそれに応えてくれるもので。


小太刀さんの方も、今までよりも心なしか愛想良く、柔和な表情で挨拶を返してくれるようになった。


そんな彼を見る度にとても嬉しくなって、私はすこぶる浮かれまくっていた。


今までの人生の中でそこまで感情が高ぶった事が記憶の中にはなく、最初は自分自身戸大いに戸惑ったけれど、ずっと苦手意識を持っていた(あっちからも嫌われてるんじゃなかろうかと思っていた)人と気軽に言葉が交わせるまでの関係に発展したのだから、そりゃテンションが上がるよね。


やっぱ和気藹々とした雰囲気の中で仕事できるに越した事はないもん。


だから今の私の心情に、何らおかしい所はないと、すぐに納得した。


もちろん、調子に乗り過ぎてとんでもないポカをやらぬよう、要所要所で自分を諌めているけれど。


そんなこんなで人間関係は良好、仕事も順調で、そろそろ独り立ちできるレベルにまで到達し、とても充実した日々を送っていたある日、夕飯後のくつろぎタイムに麻美から電話がかかって来た。
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