スイートホーム

私と同じく管理栄養士である畑山さんと池谷さんは、苦笑いしながらそう言葉を交わした。


辞表を提出した段階で、お二人にはいち早くその事を報告してある。


私が辞める事によって、ダイレクトに影響がある立場の方だし。


管理栄養士の仕事は多岐に渡っていて、献立作り、調理、飲食提供は当然の事ながら、食材や備品の仕入れや管理、それを卸す出入り業者さんとのやり取り、それに伴う事務処理など、総務部と経理部連携の元、こなしていかなければならない。


また、社内で実施する健康診断で、再検査まではいかないけどいずれかの数値が基準値より高め、という状態の社員に対し、定期的に栄養指導も行ったりする。


なので我が社では調理は主にパートの方にお任せして、その他の業務を三人の管理栄養士、つまり正社員で分担しているのだ。


だから私が抜けるとその分先輩方に負担をかける事になってしまう。


この会社のネームバリューなら後任はすぐに見つかるだろうけど、お二人と同程度の仕事がこなせるようになるまでにはそれなりの時間がかかるのだから。


「本当に、突然わがままを言って申し訳ないです。あ。それで、退職理由は本当に結婚ではありませんので…」


「ああ、うん。大丈夫だよ。それは分かったから」


「規則に則って、きちんと手順を踏んで辞めるんだから、余計な気は使わなくて良いよ」