スイートホーム
そうフォローしてくれたあと、一呼吸置いてから池谷さんは続けた。


「…人生、色々あるもんね」


隣の畑山さんも無言で頷いている。


その口調や表情に、思わずドキッとしてしまった。


……もしかして先輩達、薄々感付いてる…?


だけどその事を私に確認し、掘り下げようという気はないようだった。


「あ、立ち話してる場合じゃないね。仕事に戻ろう」


池谷さんはハタと気づいたようにそう言うと、言葉通りその場から動き出した。


パートの方達は社食が閉まる16時と同時に上がるけど、私達は17時30分までの勤務であった。


後片付けや掃除、事務処理など、それぞれローテーションで割り振られた業務をこなすのだ。


と言ってもランチタイムは14時までで、それを過ぎるとメニューはサンドイッチやケーキなど軽食に切り替わり、時間経過と共に利用者はどんどん減って行く。


なので16時を待たずに、パートの方がさりげなく整理整頓を始めて下さっているので、それを引き継ぐ私達にさほど負担はなかった。


もちろん、利用者を急かしたり不快な思いをさせないように、先行して片付けるのはあくまでも厨房内だけだけど。


「すみません。私が話を始めちゃったから…」


扉を抜け、カウンター越しに見える食堂の方へと移動した池谷さんと、私の傍らに佇む畑山さんに、交互に視線を配りつつ謝罪した。
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