スイートホーム
事務処理を終えた後、今度は夕飯作りをするべく厨房へ。


本日のメニューは鯖の味噌煮定食だ。


作る量は12人前。


副菜や汁物も付けなくちゃいけないけど、それぞれ大鍋で一気に作るのでさほど手間はかからない。


材料の下ごしらえを開始した私は、いつものように意識を違う事柄に向け始めた。


もう体で覚えている、手慣れた作業なので、そちらに集中する必要はないのだ。


今の私の頭の中を占領しているのは、言わずもがなで小太刀さん。


途中予約表の変更があり、今日の彼の夕食と明日の朝食は「不要」となった。


どうやら夜から朝方にかけての勤務に就くらしい。


先ほどは出勤前にゴミ出しをしておこうと集積場に向かい、そして私と鉢合わせをしたのだろう。


そこで改めて自分のあの時の醜態が思い出され、尋常じゃなく顔が熱くなる。


とりあえず、小太刀さんとは明日のお昼くらいまでは顔を合わせずに済むという事だ。


僅かながらでも猶予期間を与えられて、ホッと一安心。


といっても、問題が先のばしになっただけだけど。


いつかは小太刀さんと接する時がやって来る。


その時彼は、どういった対応をしてくれるのだろう。


……もしかしたら、つい『記憶から消して下さい』なんて口走ってしまったあの言葉通りに、私の告白はなかった事にされて、答えをもらえないままに終了となってしまうかもしれないけれど。
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