スイートホーム
もう来てしまっているのだし、すぐに帰らせるにしても、顔を会わせる必要はあるだろう。


その役目を旦那さんに丸投げする訳にはいかないもんね。


私はため息を吐きながら割烹着を脱ぎ、ハンガーにかけると、すでに先を行っていた旦那さんの後を追いかけてエントランスまで進んだ。


来訪者は別に管理人室を通さなくても、入居者に直接インターホンで呼び掛けてかまわない決まりだった。


そもそも受付は9時から18時までなので、それ以外の時間に訪問した人はそうせざるを得ない。


そして入居者は来訪者を何時に出入りさせても構わないし、宿泊させる事も許されている。


もう良い大人なのだから、『それぞれ自己責任でどうぞ』という事だ。


面接の時にも説明を受けたけど、そこは普通の集合住宅に暮らす人々と条件は同じである。


ただし、合鍵を渡したり暗証番号を教えたりするのは絶対にご法度であった。


必ず入居者が同伴しているか、もしくは中からロックを外すという方法でなければ、エントランスホールから先への部外者の立ち入りは禁止である。


部屋番号が分からなかったり、また、インターホンの応答が無い場合、他の場所に居る可能性があるので、そういう時に管理人である旦那さん達や、それに準ずる存在の私が取り次ぎを頼まれるのである。


「よぉ、姉ちゃん。久しぶり~」


「『久しぶり~』じゃないでしょ!」
< 236 / 290 >

この作品をシェア

pagetop