スイートホーム
「俺が結婚したら同居する気満々なんだろうけど、冗談じゃねーよ。絶対に嫁いびりするぜ?あの人」


「そうかな?」


私には当たりが強いけど、志希同様、外面はすこぶる良いタイプだから…。


「いやいや、するする。『嫁に来たからにはもう守家家の人間。私が躾してあげなくちゃ』って、大いに張り切り出すに決まってんだろ」


「それもそうか」


私は志希の説にあっさりと納得した。


外面が良いという事は反面、身内には容赦なく攻撃を仕掛けるって事だもんね。


『溺愛している息子のお嫁さん』なんて、それこそ絶好のターゲットじゃない。


お小言や説教や嫌味を繰り出さない訳がない。


「1日仕事して疲れて帰って来んのにさ、家の中がギスギスしてたら、メンタルやられちまうじゃんか。やっぱ我が家は精神的に安らげる、居心地の良い空間じゃないと。いわゆるスイートホームってやつ?」


「そうだよね…」


私はしみじみと同意しながら頷いた。


『スイートホーム』、か…。


28年間、自分の家に居ながら常に緊張を強いられ、真から寛いだ事などなかった私にとっては、心底憧れが募る、まるで夢のような言葉だ。


「あ。姉ちゃん、昼メシ食いながら話しろよ」


志希はハタと気付いたように言葉を発した。


「グズグズしてたら時間なくなるぞ?」


「…うん。そうね」
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