スイートホーム
そのプランは立ち消えになってしまった訳だし、そして今度いつそんな機会が巡って来るか分からない。


今が決断の時なのかも。


「やっと見つけた厚待遇の仕事を逃したくない」という大義名分があれば、今までずっと一人暮らしに否定的だったお母さんだって折れざるを得ないだろう。


『自宅から充分通えるのに、アパートを借りる必要なんかないでしょ?』


就職する際に一人暮らしを打診してみたら、間髪入れず投げ掛けられた言葉。


「嫁入り前の娘がみっともない。『どうせ男を引っ張り込むつもりなんだろう』なんて世間様に思われるわよ」


とんでもなく偏見に満ちた、凝り固まった物の考え方だけど、あの頃は今よりさらにお母さんに対して萎縮していたから何も言い返せず素直に従ってしまった。


ホント、下手に反論、抵抗しようものなら、その後さらにやっかいな事態になるんだから。


「家事やお金のやりくりをきちんと覚えて、防犯知識を身に付けて、自分が嫁ぐ時か、もしくは志希がお嫁さんを見つけた時にこの家から出るようにしなさいよ」


一見娘の為を思っているかのような発言だけれど、要するに『独身時代は家族に尽くせ。でも弟が結婚したら邪魔だから出て行け』という事なんだよね、それって。


とにかく、自分の家事の負担を減らす為と、大学卒業までに私にかかった費用を一円でも多く回収する為に、家から出る事を許さなかったんだと思う。
< 42 / 290 >

この作品をシェア

pagetop