スイートホーム
「あ、彩希」


だいぶ日が傾き、灯った外灯の下、門に背を預けるようにして佇むその人物に気付いた瞬間、思わずビクッとしながら足を止めた。


「良かった。管理人さんに、出掛けてるけど多分そろそろ帰って来る頃だろうって言われて、ここで待ってたんだ」


「…いや、ていうか…。どうしてあなたがここに居るの?」


「ご実家に電話してみたの。最近ご無沙汰してますって。それで、彩希ともしばらく連絡取ってないんだって言ったら…」


眉尻を下げて微笑みながら、梨華は続けた。


「電話に出たのは志希君なんだけどね、彩希がここに転職した事と、住所まで快く教えてくれたんだ。……ホント、ご家族は何も知らないんだね」


「何しに来たの?」


未だ混乱は続いていたけれど、いつまでもオタオタしていたら相手になめられるだけだ。


何とか虚勢を張って、強い口調で言葉を発した。


「もう、梨華とは話すことはないって、言ったよね?」


「でも、このまま彩希と、離れてしまうのは、あまりにも悲しくて……」


「そうなったのは誰のせい?」


そんな顔したって、誤魔化されないんだから。


「悪いけど、私もう、梨華と付き合うつもりはないよ。常識で考えれば分かるでしょう?」


「あ、守家さん?」


するとその時背後から、この緊迫したムードにはそぐわない、聞き慣れた陽気な男性の声と、足音が響いて来た。
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