スイートホーム
「おつかれ~。誰?お友達?」


振り向くと、入居者の加賀屋さんと小太刀さんが、連れ立って歩いて来る所だった。


「彩希…」


「と、とにかく帰って」


こんなやり取りを職場の人に見聞きされたくないと焦った私は、梨華が伸ばして来た手を反射的に払いのけた。


といっても、そんなに強い力が加わった訳ではない。


「きゃっ」


しかし何故か梨華はバランスを崩したようによろけると、横座りの姿勢でその場に倒れ込んだ。


「え!?」


思わず驚きの声が出る。


何で今の動きで、そんな事態になるワケ??


私達が立っているのは綺麗に舗装されている歩道で、足が取られるような突起物、障害物などは周りに見当たらない。


若干ヒールの高いパンプスを履いてはいるけど、女子力の高い梨華ならこれくらい慣れたものだろうし、これが原因で足元がおぼつかなくなった、というのも考えられない。


「え?どうしたの?」


至近距離まで近付いて来ていた加賀屋さんも、驚いたような声を上げた。


「えっと…。大丈夫ですか?」


そしてすかさず梨華へと右手を差しのべる。


小太刀さんも成り行きで私達の傍らで立ち止まったけれど、何も言葉は発せず、静かに状況を見守っていた。


「す、すみません。お騒がせしてしまって」


加賀屋さんに手を取られ、引っ張り上げられながら、梨華が恥ずかしそうに謝罪する。
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