憎悪と、懺悔と、恋慕。
 
 「これは早川さんの大吉でしょ??」

 『自分で持ってな』とそのおみくじを早川さんに返そうとすと、

 「ちゃんと自分の分も大吉引いてきましたから!!」

 『じゃーん!!』と今度は大吉のおみくじを翳す、早川さん。

 「木崎センパイの分の大吉は、1発で出たんですよ、ホントに!! でも、ワタシの分がなかなか出なくて・・・。 小吉引いては木の枝に結んで、中吉引いては結びに行って・・・。 お正月なんだからケチケチしないでもっと大吉出易くしてくれてもいいのにさー」

 そう言いながら口を尖らす早川さん。

 どうやら、早川さんの帰りが遅くなった理由は『おみくじで大吉が出なかったから』らしい。

 てゆーか、

 「おみくじ何回も引きなおして出した大吉って・・・ヤラセじゃね??」

 おみくじってそういうモンじゃなくね??

 「だって、今年は大吉な年じゃなきゃ嫌なんですもん!!」

 早川さんが可愛く開き直った。

 『今年は』 去年はきっとオレのせいで散々な年だったのだろう。

 神様どうか、オレの分も彼女を幸せにして下さい。
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