憎悪と、懺悔と、恋慕。
 

 「・・・オマエの母親に、オレの親父と別れる様に説得して欲しい」

 願望を口にした木崎センパイのしている事は、お願いというよりは命令に近かった。

 きっと、ワタシがココで『はい、分かりました』と言わない限り、木崎センパイはワタシを家に入れてはくれないだろう。 自分の家なのに、帰れない。

 ワタシだって、お父さんがいながら不倫なんてものをしているお母さんを許せないし、気持ち悪くて仕方が無い。

 でも、どうやって・・・??

 「・・・木崎センパイは、自分のお父さんに何か言いました??」

 「・・・・・・言ったけど、オレん家ちょっと・・・。 明日、連絡する。 母親と話し合ってどうなったか教えて。 じゃあ」

 話を一方的に断ち切って、木崎センパイは帰って行ってしまった。

 『オレん家ちょっと・・・』何なんだろう。

 しかも『母親と話しあってどうなったか教えて』。 今日、絶対話し合えよって事なのだろう。

 正直、お母さんの顔なんか見たくない。 話なんかしたくもない。


 気持ちが、悪い。
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