憎悪と、懺悔と、恋慕。
「待って!!」
早川さんを追いかけると、彼女は既に玄関で靴を履いていた。
「ちょっと待ってよ、早川さん!!」
早川さんの肩を掴んで自分の方に向かせると、早川さんが苦しそうに顔を顰めながらオレの胸を押した。
「ダメじゃないですか、木崎センパイ。 ワタシを追いかけてきちゃダメですよ。 早く戻って下さい。 木崎センパイのお母さんの1人にしちゃいけない。 気持ちを荒げちゃいけない」
あんな事を言われてもオカンを気遣う早川さんは、元々優しいのもそうだけど、やっぱりオカンへの罪悪感もあるのだろう。
「でも!!」
早川さんの事だって放っておけない。 だってさっき、凄く傷ついたでしょう??
「・・・木崎センパイのお母さんの言う通りだと思う。 木崎センパイ、早まってませんか?? 大学に行けば、全員がワタシより頭が良くて、可愛い子ばかりですよ。 今、ワタシに決める事ないと思います。 ワタシだって、後々振られるとか辛いですもん」
やっぱり、早川さんの心はしっかり傷ついていた。
早川さんは、自分の心が傷ついているから、オレに聞きたくもない話をしている事に気付かない。