憎悪と、懺悔と、恋慕。
なんて自分勝手な人だろう。
いつもいつも当たり前の様にワタシの事を蔑ろにする木崎センパイに、腹が立つというよりは、悲しくなった。
別に、箱入り娘の様に大事に大事に育てられたわけではない。
でも、こんなにも『コイツは傷ついて当然』的な扱いをされた事は、今までなかった。
地味に傷つく。
それでも、4歳から母親への罪悪感を持ち続けている木崎センパイに『行きたくないです』なんて主張出来ない。
もしワタシが木崎センパイの立場だったら、ワタシも同じだったかもしれないから。
「・・・じゃあ、お言葉に甘えて」
本当は、木崎センパイの言葉に甘える必要もなければ、甘えたくもない。
なのに断れないワタシは、ポケットから携帯を取り出し『今日はトモダチの家でゴハン食べるから、ワタシの分はいらないよ』とお母さんにメールを打った。
木崎家の晩ゴハンは何時なんだろう。
何時に家に帰れるのだろう。
今からワタシもまた、木崎センパイのお母さんへの罪悪感に耐え忍ばなければならない、長い長い時間が始まる。
晩ゴハンは、木崎センパイのお父さんもいるのだろうか。
想像するだけで地獄。
ワタシは、ちゃんと笑顔で食卓を囲めるだろうか。