憎悪と、懺悔と、恋慕。
-------2度と来る事はないと思っていた木崎センパイの家に到着。
木崎センパイが玄関のドアを開けると、
「莉子ちゃーん!! いらっしゃーい!!」
木崎センパイのお母さんが、ニッコニコな笑顔で出迎えてくれた。
木崎センパイは、自分の母親が笑顔になるのが嬉しいらしく、本当はワタシを家に呼びたくなんかないくせに『ちゃんと連れて来たから』と木崎センパイのお母さんに得意気な顔をした。
木崎センパイは、自分の母親を喜ばせる為なら自分の気持ちはどうでも良いのだろう。
ワタシの気持ちだけじゃない。
「おじゃまします」
木崎センパイのお母さんに、軽く会釈をして靴を脱いでしゃがむと『オレがやるから』と木崎センパイがワタシの靴を揃えてくれた。
ワタシへの親切じゃない。
木崎センパイのお母さんに、不機嫌になって欲しくないからだ。
分かっているから、素直に喜べない。
「・・・ありがとうございます」
嫌われて当然のワタシだけど、少しでもイイヒトな印象を与えたくて、お礼はちゃんと言う。
あざとい木崎センパイの行動に、自分のあざとさを被せる。
「どーいたしまして」
木崎センパイが、眉間に皺を寄せながら笑った。
ワタシたちのこの関係は、一体何なのだろう。