憎悪と、懺悔と、恋慕。
 
 木崎センパイの目なんか恐ろしくて見れるはずもなく、視線を合わさぬ様に顔を伏せながら木崎センパイの正面まで移動。

 ・・・さっさと謝って戻ろう。 うん、そうしよう。

 「あの、昨日は・・・「これ、使える様なら使って」

 謝ろうとしたとき、木崎センパイが何枚かの紙を差し出した。

 それを、わけも分からず手に取る。

 「オレが1年の時の試験プリ。 テスト範囲違うかもだけど」

 木崎センパイから受け取ったプリントは、全部90点以上で、間違えた部分もちゃんと赤ペンで正しい答えが書かれていた。

 「・・・物持いいんですね。 いいんですか?? お借りしても」

 正直、凄く助かる。

 「オカンが保管してた。 オレ、もう使う事ないから、どうぞ」

 木崎センパイが恥ずかしそうに俯いた。

 ちょっと面白かったから『未だに親にテストの結果見せてるんかい!!』って突っ込んでやろうかと思ったが、さすがにやめた。

 「これ、ありがとうございます。 あと、昨日は本当にすいませんでした」

 プリントを胸に抱え、勢い良く頭を下げた。

 しかし、あんなキツイ事言ったワタシに、なんで試験プリ貸してくれるんだろう。

 「謝んないで。 ・・・オレさ、ずっとイライラしてて。 親父にも、原因を作ってしまった自分にも。 早川さんの事も『親父の愛人の娘』って思うとイライラして・・・。 早川さんは悪くないって分かってるのに、なんかムカついて。 早川さんが怒るのは当然だから。 オレが悪かった。 ゴメン」

 木崎センパイも頭を下げた。

 木崎センパイが試験プリを貸してくれるのは、木崎センパイなりのお詫びの印なのだろう。

 ふと試験プリに目を落とす。

 ・・・・・・え。
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