憎悪と、懺悔と、恋慕。
ちょっと会話が出来る様になったと言っても、ワタシを嫌いな事には代わりないだろう。
悲しくて、『ぎゅう』とシャーペンを強く握った。
そんな事したところで英文を訳せないワタシは、シャーペンを動かす事など出来ないのだけれど。
「・・・早川さんの事、確かにむやみに目の敵にしてたけど、今は嫌いじゃないよ。 面白いコだなって思う。 そうじゃなくて、オレ、他人に勉強教えた事ないから、どうやったら分かり易く説明出来るかなーと思ってさ。 多分、今オレが何かを言ったところで、すげぇ分かり辛い気がするんだよね。 そこんとこ、シチュー作りながら考えてくるから、早川さんはひたすらノートに単語書いて覚えててくれない??」
木崎センパイがワタシの顔を見て『教えるって言ったくせにゴメンね』と困った様に笑った。
木崎センパイの言葉が、嬉しくて、切なくて、申し訳なくて、心臓がドキドキした。
耳が、チリつくほど熱い。
良かった。 ワタシ、長めのおかっぱ頭で。
おそらく真っ赤になった耳は、上手い事髪で隠せているだろう。