憎悪と、懺悔と、恋慕。
 

 木崎センパイがシチューを作りに部屋を出て行き、言われた通りワタシはひたすら単語を暗記。

 ・・・出来るわけがない。

 心臓がドンドコドンドコ鳴って、全く集中出来ない。

 あ、お母さんに『今日も晩ゴハンいらない』ってメールしなきゃ。

 ポケットから携帯を取り出すも、手を滑らしそれをフローリングに転がす。

 もう、何やってるんだ。

 どうした!? ワタシ!!


 ・・・コレは、アレだ。

 恋ってヤツだ。

 なんて簡単な女なんだ、ワタシは。

 ちょっと優しくされると、コロっとすぐ好きになっちゃって。

 木崎センパイはワタシの事を『嫌いじゃない』とは言ってくれたけど、それは『好き』というわけではない。

 と言うか、木崎センパイの大事なお母様の旦那様の不倫相手の娘を、好きになるはずもない。

 分かってるのに、なんで恋しちゃうかな。 ワタシは。

 ・・・頭が悪いからだ。

 お母さんの娘だからだ。

 好きになってはいけない人を好きになってしまった、お母さんの気持ちが理解出来てしまった。

 でも、ワタシは絶対お母さんよりバカじゃない。

 誰も傷つけないし、ワタシ自身も傷つくもんか。

 この恋は、ワタシの胸の奥底に埋葬しよう。

 どうか、成仏して下さい。
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