臆病者のシーソーゲーム(仮)
目の前に立つ悠はスラッと背が高くて…
同じ制服姿で学校なら、
同じクラスの男子としてそんなに気にならないのに、
その長身が制服以外で立つと、別人の様でドキッと胸が高鳴ってしまう。
それに私と二人だからだろうか、
教室に居て皆に囲まれている時の、
中学生らしい人が寄りつく明るくて少し無邪気さを出した顔じゃなくて、
屋上に居る時の様な少し落ち着いていて静かな雰囲気。
顔も穏やかな微笑み。
その顔と雰囲気が、悠の高い身長を引き立てるようで、
同じ中学3年に見えない様で悔しい。
まあ、服装はスポーツメーカーのジャージのズボンに黒のTシャツって、
完全に『コンビニ行きます』的な…同じ年の異性と遊ぶと意識したものではないけど。
ここからもわかる。
悠は私を『女』と思ってないんだなと……
それならば私は、『女』を意識しないで楽しむまでだ。
意識されて部屋の中で気まずくなるよりずっと良い。
気まずくならなければ…そうすれば彼が望む時間まで隣に居て寂しさを感じさせないであげられるから。
「公園の外に居るのかと思って電話しちゃった」
右手に持っているケータイを閉じポケットに仕舞った悠。
私は悠の言葉に…悠とは逆にポケットからケータイを出した。
ケータイを開けば『着信あり』の文字と、
履歴に残る『須藤悠』の文字。
こないだまでケータイに入っていなかった連絡先は、
悠の家に行くと決まった日に新しく加わった。
何気なく見たアドレスの最後に記されているケータイ会社は、
偶然にも同じもので…それだけなのに何だか共通点の様で嬉しかった。