ツンデレくんを呼んでみた。
「……奈子?」


中出があたしの異変に気づいて頭を上げた。


おそらく耳にかけて流れた涙を見られた。


中出は起き上がって、ブラウスのボタンを直してあたしから離れた。


「中出……」

「やめた」


あたしはベッドに沈んだまま中出を見た。横を向いてちらりと見下ろした中出と目が合う。


「泣かれると正直めんどい」

「ごめん……」


涙を拭ってあたしも起き上がる。


「嫌なら無理にはしねえよ」

「嫌じゃないよ……そんなんじゃない」


違う。嫌じゃない。それだけは確かだ。


でも、あの出来事があたしの感情をぐちゃぐちゃにする。どうしようもなく冷静でいられなくなる。


今も、幸せだったのに。どうして怖いと思ったの。


違う意味でまた泣きそうになる。


泣かれた中出だって、いい気分ではないだろう。


中出がようやくその気になったのに。


「ごめん、ごめんなさい……」


中出に触ることはできなかった。今触ったら絶対引き剥がされる。


こんなに近くにいるのに、触れることすらできない意気地なしのあたしは泣くことしかできなかった。


ごめんなさい。お願いだから嫌いにならないで。どうか傍にいさせて。


シーツを握り締めて、俯く他なかった。


涙がポタポタと落ちてシーツにシミを作る。


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