甘い心はあなた一色
「楠先輩?」
トボトボと自転車を押していたあたしに聞こえた、天使の声。
こ、この声は!!
「しっ、織くん!?」
途端に風が吹いて、もうほとんど散った桜の木が揺れた。
そして目の前の綺麗な黒髪を、ふわっとさらった。
緒方 織(おがた しき)
2年生で一番かっこいい(あたし目線)男の子。
うそうそうそ!!
目の前に織くんがいる!?
「……俺の顔、何かついてます?」
「えっ?い、いえいえ……」