甘い心はあなた一色




肩を押されて、あたしはバランスを崩した。



うわわ、転んじゃう……。



ギュッと目を閉じたあたしの背中に、何かが触れた。



――え?



「お前ら何してんだよ」



頭の上から聞こえたのは、低い声。



この声……。



「……彼方?」



「紗英子大丈夫か?」



振り向くと、彼方が心配そうな顔であたしの名前を呼んでいた。




「え、だ、大丈夫だけど」



「そっか、よかった」



彼方が安心したのが、見て取れた。



どうしたの?こんなの彼方らしくない。




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