檻の中



 あまりにも突然すぎて、何が起こったのか分からなかった。


 わたしは絶句して画面を見つめていた。



『ぎゃああぁああッ!! か、髪がぁっ……髪がぁぁぁ!』


 焼け焦げた頭皮を押さえながら、地面を転げ回る少女……。


 それを見ている主人がケラケラと子供のような笑い声を立てていた。


 目を覆いたくなるような光景に、わたしは身体の震えを止められなかった。


 ガスバーナーで少女の髪を焼いた主人は、やっと耳障りな笑いを引っ込めた。



『これ、新しい玩具なんだけどさぁ。面白いね! もっと試したくなっちゃうなー』


 そんな弾んだ声とともに、再び青い炎が画面に映り込む。


 悶絶していた少女がハッと顔を上げ、大きく落ち窪んだ目を見開いた。


 焦げた頭皮から数本の髪の毛が垂れ下がり、少女の容貌はもはや原型を留めていない。


 顔の皮膚にも火傷を負っているようだ。



『や、や、やめて……。もう、犠牲は払ったわ! お願いだから、もうやめて……』


 少女は地面を這いずるようにして後退りすると、壁に力なくもたれかかった。



『君の希望通り、自由にしてあげるんだよ。そんなに怖がらないで……。ね?』


 悪魔の声がなだめるように囁く。


 少女は壁にしがみついて、恐怖と諦めの入り混じった表情を浮かべている。


 やめて……やめて!


 わたしは少女と一緒に、口の中で呟いていた。



『さようなら──カノン。ありがとう』



 柔らかい声が響いた瞬間、一段と大きな青い炎が少女を包み込んだ。





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