檻の中
モニターの電源が落ちた後も、わたしはその場から動けずにいた。
真っ暗になった画面に、沈んだ表情の自分が映る。
ひどい顔……。
大きくため息をついてから、背後にイシザキの気配を感じて振り返った。
「辛いか」
イシザキが静かに口を開く。
わたしは歯を食い縛り、無言で頷いた。
声を出したら泣いてしまいそうだった。
「選択権をやろう。ロミオの中継映像を定期的に見るか、一生見ないか……どっちだ?」
「えっ……」
イシザキの思いがけない言葉に、わたしは顔を上げた。
正直、虐げられている裕太の姿を見るのは辛い。
リンに対して強い憤りを感じるし、精神的な苦痛に心を蝕まれそうな気がする。
でも……。
裕太に会えなくなるのはもっと辛い。
わたしは覚悟を決めて、イシザキを見つめた。
「見れなくなるのは嫌です……」
「だろうな」
予想通りの答えだったらしく、ニヤリとして背を向ける。
イシザキはそのまま部屋から出て行った。
「ハァ……」
椅子に身体を沈め、大きくため息をつく。
ショックから立ち直れないまま、わたしはいつしか眠りの世界に誘われていった。
もう何も考えたくない……。
『……様。ジュリエットお嬢様』
心地良い囁き声が耳をくすぐる。
──誰かいるの……?
わたしは寝ぼけ眼で部屋を見回すが、誰もいなかった。
『ここですよ。私はここにおります』
その声は目の前のモニターから聞こえていた。
まさか……。
恐る恐る視線を戻すと、画面越しに見知らぬ男がこちらをじっと見つめていた。