ma cherie *マシェリ*
「え?」



驚いて横を見ると、若い男の人が立っていた。


歳はあたしと同じぐらいか、もう少し下って感じ。


キャップを目深にかぶって、ダボっとしたシャツとパンツ姿。

ストリート系って感じ。


オシャレだとも言えるけど、ちょっと軽そうなイメージでもある。



ひょっとしてナンパ?


思わず身構えて何も答えないあたしに、彼は慌てて言う。


「ああっ。 オレ、ナンパとかじゃないから!」



あまりにも激しく手を振って言うので、なんだかおかしくて笑ってしまった。


すると彼もホッとしたような顔をする。



「良かった。 オレ、軽く見られちゃっていつも誤解されんだよね」


「はぁ……そうなんですか」


「で、地元の人だっけ?」


「はい。そうですけど」


「なら良かった」


「えっ?」


「オレ、観光で来たんだけど。道に迷っちゃってさ。教えてもらえるかな」


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