ma cherie *マシェリ*
「大丈夫ですか?」
奥さんは苦しそうに顔を歪ませていたけど、あたし達の顔を見てホッとしたような表情を見せた。
「陣痛ですか?」
マヒロさんがしゃがみ込んで奥さんに声をかける。
「そうみたいなの……。破水しちゃって……予定より一週間早いんだけど……」
奥さんは額にびっしり汗を浮かべて、お腹をさすっている。
もうかなり辛そうだ。
「とにかく、病院行きましょう。どこですか?」
「……若林産婦人科…」
「オレ、つきそいます。タクシー拾って行きましょう」
そう言って立ち上がったマヒロさんの腕を奥さんが掴んだ。
「待って! これを主人に……」
奥さんの手にはA4サイズの茶封筒が握られていた。
「大事な書類なの。仕事で……トラブルがあったらしくて……どうしても届けなくちゃならないの……」
マヒロさんは奥さんの手から茶封筒を抜き取ると、あたしに差し出した。
「サキ、これ佐伯さんに届けて。わかるだろ? 会社」
あたしはもう何をどうすればいいかわからない状況だった。
テキパキと指示を出すマヒロさんに従ってただ頷くことしかできない。
マヒロさんはタクシーを止めると、奥さんを抱きかかえるようにしてそれに乗り込んだ。
あたしはそれを見送ってから走り出した。
佐伯さんの勤める会社へと。
奥さんは苦しそうに顔を歪ませていたけど、あたし達の顔を見てホッとしたような表情を見せた。
「陣痛ですか?」
マヒロさんがしゃがみ込んで奥さんに声をかける。
「そうみたいなの……。破水しちゃって……予定より一週間早いんだけど……」
奥さんは額にびっしり汗を浮かべて、お腹をさすっている。
もうかなり辛そうだ。
「とにかく、病院行きましょう。どこですか?」
「……若林産婦人科…」
「オレ、つきそいます。タクシー拾って行きましょう」
そう言って立ち上がったマヒロさんの腕を奥さんが掴んだ。
「待って! これを主人に……」
奥さんの手にはA4サイズの茶封筒が握られていた。
「大事な書類なの。仕事で……トラブルがあったらしくて……どうしても届けなくちゃならないの……」
マヒロさんは奥さんの手から茶封筒を抜き取ると、あたしに差し出した。
「サキ、これ佐伯さんに届けて。わかるだろ? 会社」
あたしはもう何をどうすればいいかわからない状況だった。
テキパキと指示を出すマヒロさんに従ってただ頷くことしかできない。
マヒロさんはタクシーを止めると、奥さんを抱きかかえるようにしてそれに乗り込んだ。
あたしはそれを見送ってから走り出した。
佐伯さんの勤める会社へと。