アナタガスキ

誰かに聞かれて答える関係は『恋人』では
ない私たち。

冗談を言い合ったりする楽しい時間や、
寄り添って寂しさを分かち合う時間の延長にお互いを求め合うだけ。

彼は私に『好きだよ』って言うけれど、
それはlove じゃなくてlikeだって意味で口にする言葉。

だから私は本当の気持ちを言えない。


「りょうくん……」

「ん?」

「……ううん、やっぱりいい」

小さく首を振ると、むにっと頬を摘ままれた。

「どした?」

「なんでもない」


どうしてこの人を嫌いになれないのだろう?

体温を感じる度にその温もりを離したくなくて、心が悲鳴をあげる。


「りーか、ちゃん?」

傍にいたくて何もかもを投げ出しそうになるのが怖いから、自分で自分にブレーキをかける。

「りょうくんの田舎は、今ごろたくさん雪が
 降ってる?」

「あ?」

今日はいいお天気なのに、宅配便の箱が寒そうに見えた気がしたから。

「なんとなく……降ってるかなって」

「あーまぁーかなり積もってるやろうな」

「そっか。寒そうだね」

だけど、あの箱の中はきっとあったかい。

「なんや?今日はりかちゃん変やな」

時々出てくる彼の地元の言葉に普段ならときめくのに、今日はすごく距離を感じる。

「そんなことないよ」


ネェ、ホントハワカッテイルノ?

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