ポケットにキミの手を


「はい、コーヒーでいい?」

「ありがとうございます」


外に出て、花が咲き乱れる庭園を眺めながらベンチに座りコーヒーを飲む。平和でのどかなこんな時間が、とても心地いい。


「司さん」

「ん?」

「一緒に旅行できるなんて、私ホントに幸せです」

「……安い幸せだなぁ。これからいくらでも行くよ? 俺は毎年家族旅行とかするつもりだけど」

「家族旅行……」

「身軽なうちに一杯行こうな」

「身軽って」


顔を赤くして、視線が泳ぎだす。いちいち反応が面白くて、ついついからかいたくなってしまうな。


 その後、道の駅などでおみやげを見たりしながら郊外の温泉街にまで移動し、宿にたどり着く。


「わあ、素敵」

「折角初めての旅行だしね」

「私、実はこういうところ泊まったことないんです」

「家族で旅行とかしなかったの?」

「日帰りで行けるようなところしかいかなくて。親も出不精だったので」


旅慣れてなさそうなのはそのせいなのか。
納得しつつも菫の笑顔を見ていると、遠回りにはなっても温泉宿をとってよかったと思う。

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