ポケットにキミの手を
*
約束の時間の二時間前から、私は鏡の前で身だしなみを整えている。髪型なんて何回直しただろう。ああは言ってみたもののやっぱり気になってしまって、どんな格好をしても不安が拭えない。ひと通り身だしなみを整えて司さんに見せると、彼はふっと笑う。
「綺麗だ。似合うよ」
「あ、ありがとうございます」
彼にそう言われただけで、妙に安心してしまう。
いつもより明るい色のシャツとネクタイで、スーツをビシッと着こなした司さんもいつもより何倍も格好良い。
司さんのご両親は、こんなに素敵な司さんを産み育ててくれた人だ。今日は一日、それを忘れないようにしよう。
「今日は俺は飲まないから車で行こう」
「え? いいんですか? 折角ご両親と会うのに」
「帰りにドライブがしたいからいいんだ」
今日の彼はやっぱりどこか頑なで。
私は自分のことよりも、彼のことが心配だった。
そうして連れてきてもらったのは、以前プロポーズしてくれた時みたいな高級なレストランだ。
天井のシャンデリアは、ガラス細工のように明かりをキラキラと反射させている。それでいて華美すぎることはなく、全体的に上品な雰囲気が漂っていた。
私たちが入ると、支配人と思しきタキシード姿の男性が近づいてくる。
「いらっしゃいませ、里中様」
名乗る前に名前を呼ばれるって。顔パスなの?
でも驚いているのは私だけだ。彼は当然のようにそれを受け入れているし、割と近い位置の席に座っているお客さんも特に違和感は感じていなさそう。
約束の時間の二時間前から、私は鏡の前で身だしなみを整えている。髪型なんて何回直しただろう。ああは言ってみたもののやっぱり気になってしまって、どんな格好をしても不安が拭えない。ひと通り身だしなみを整えて司さんに見せると、彼はふっと笑う。
「綺麗だ。似合うよ」
「あ、ありがとうございます」
彼にそう言われただけで、妙に安心してしまう。
いつもより明るい色のシャツとネクタイで、スーツをビシッと着こなした司さんもいつもより何倍も格好良い。
司さんのご両親は、こんなに素敵な司さんを産み育ててくれた人だ。今日は一日、それを忘れないようにしよう。
「今日は俺は飲まないから車で行こう」
「え? いいんですか? 折角ご両親と会うのに」
「帰りにドライブがしたいからいいんだ」
今日の彼はやっぱりどこか頑なで。
私は自分のことよりも、彼のことが心配だった。
そうして連れてきてもらったのは、以前プロポーズしてくれた時みたいな高級なレストランだ。
天井のシャンデリアは、ガラス細工のように明かりをキラキラと反射させている。それでいて華美すぎることはなく、全体的に上品な雰囲気が漂っていた。
私たちが入ると、支配人と思しきタキシード姿の男性が近づいてくる。
「いらっしゃいませ、里中様」
名乗る前に名前を呼ばれるって。顔パスなの?
でも驚いているのは私だけだ。彼は当然のようにそれを受け入れているし、割と近い位置の席に座っているお客さんも特に違和感は感じていなさそう。