ポケットにキミの手を

「……司が頑固なのは残念ながら君の血だよ。君たちはいつも平行線だ。むしろ余計司が頑なになっている気がする。菫さん、司はこういう男だよ。君の意に沿わないことでも断行することもある。それでも大丈夫かい?」


お父様の声は優しかった。彼はちゃんと自分の妻と息子の不仲を理解しているのだろう。
それでいて、今までは放っておいたのはどうして? 


「大丈夫です。司さんは私の気持ちをちゃんと聞いてくれています」

「そうだよ。アンタたちと一緒にするなよ」

「司さん。お父様も今ちゃんと聞いてくれてます」

「……菫」


司さんは口をつぐんで、上げかけた腰を下ろした。


「私ではいたらないところも知らないことも沢山あります。彼の隣に立つには、恥ずかしいくらい。だけど、司さんが好きなんです。なんでも教えてください。出来る限り頑張りますから」

「菫さん」

「母さんのいうことなんて聞かなくてもいいよ」


お母様が、しかめっ面を少し緩ませる。と思ったら司さんの一言でまた眉間にしわが寄った。

おかしい。
司さんはいつも誰とでもうまくやっているのに、お母様だけは特別なんだ。

私は傷ついてないよ、大丈夫よという意味を込めて司さんに笑いかけた。

「司さん、私色々教えて欲しいんです。私の知らない司さんのことも、きっとお母様ならいっぱい知ってる」

「そうよ。大体司は私のことを邪険にしすぎるわ。私だって心配しているのに」



< 50 / 69 >

この作品をシェア

pagetop