天使の贈り物 



「奏介っ!!」


震えだした指先は、
そーすけさんに、
それ以上音色を紡がせるのを
許さなかった。


翔琉さんが慌ててギターを置いて、
そーすけさんの方へ駆けつける。


震えだした指を、
ゆっくりと自分の手で包み込むと、
筋肉をほぐす様に
親指の付け根側から、
指先までをゆっくりとマッサージしていく。



それを何度か繰り返しているうちに、
そーすけさんの、
震えはゆっくりと止まった。



「…………」



そのまま黙って、
手を見つめる、そーすけさんは
やっぱり少し寂しそうな表情を見せた。



「翔琉さん、
 そのマッサージ、教えて。

 そーすけさんの手が震えだしたら、
 私が掌を揉み解す。

 震えが止まってる間は、
 そーすけさん演奏出来るんでしょ。
 
 ギター触ってた、そーすけさん
 一瞬だけど、楽しそうだった。

 だったら……私は、
 その時間を取り戻して欲しいもん」



そのまま……
そーすけさんの向かい側に座り込んで、
先ほどまで震えてた掌を両手で引き寄せると
親指の付け根を中心に
自分自身の両手の小指を、そーすけさんの
指先に挟んで、
親指の腹でゆっくりと揉み解していく。


コリコリとした感触を感じながら、
ゆっくりと全体的に揉み解して
指先一つ一つの神経に刺激が届くように
親指と人差し指で、
指先の先端をつまんで刺激する。



15分くらいの手のマッサージを終えると、
そーすけさんは、いつものように
掌を握ったり、
開いたりと確認するような行動をして
ギターにもう一度触れた。



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