春に想われ 秋を愛した夏


「何見てんだよ」

気がつけば、ガン見していた私に、通りを見たたままの秋斗が言って笑う。

「べっ、別に。自意識過剰なんじゃないの?」

慌ててそんなことを言うと、視線をゆっくりと私に向けて頬杖をついた。

「自意識過剰? 違う気がすんだけど」

頬杖をついてこちらを見たままニヤッと片方の口角を上げると、もう片方の手が私の方に伸びてきて髪の毛に触れた。

「髪、伸ばしてんのか?」

肩先に散る私の髪の毛に触れて、優しい瞳をする。
思わずドキンッと解り易いくらいに心臓が跳ねてしまった。

やだ。
どうしよう。
心臓が暴れてる。

髪の毛に神経なんかないはずなのに、そこから秋斗のぬくもりが伝わってきている気がするくらい過敏になってる。

「長いのも、似合うな」
「あ、ありがと」

思わず素直に礼をいうと、笑顔だけが返された。

なによ。
なんなのよ。
悔しいけど、嬉しいよ。
しかも、かっこいいなんて思っちゃったじゃないじゃない。

こんな気持ち、とっくに振り切ったはずなのに、私はまんまと気持ちを持っていかれてた。


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