宿った命



「修平・・・?一人でなにしてるの?」


突然声をかけられ、修平はリーフの頭から手を離して振り返った。


そこには少し顔の赤い紗季が立っていた。紗季は修平を不思議そうに見つめた。


「紗季・・・。ちょっとサボってた。そっちは?」


「あたしも・・・。てか、こんな半端な場所でサボってたの?」


「あ~。まぁ、ちょっとな」


「変なの。あーあ。次の授業まで長いなぁー!」


紗季が窓の外を見ながらそう言う。


窓の外は真っ白で、雪がちらほらと降っていた。


〈これ・・・、“雪”ってやつ?〉


「あ?そうだけど、まさか知らねぇの?」


〈あっちの世界では季節なんて存在しない〉


「ふ~ん」


リーフと喋っている修平は、紗季から見れば1人で喋る変な奴。


紗季に気付かれないようにそっと小声で話をしていた。


ふと、修平は紗季の横顔を見た。


綺麗な髪の間から見えるピアスが、大人っぽさを際立たせていた。


「紗季。お前・・・」


「え・・・?」


景色を見ていた紗季が修平を見つめると、修平は突然紗季の手を掴んで廊下を歩き始めた。


紗季とリーフはわけがわからぬまま、修平の後をついていく。


少し歩くと、小さく廊下に響くのは、英文を読む先生の声だった。


「ちょっと・・・修平!?」


〈どこいくんだよ〉


「・・・・・・」


修平は黙ったまままっすぐを見つめて歩いた。


着いた先は“2‐C”と書かれた教室で・・。


「修平、ここ・・・あたしの・・・」


紗季が呟くのも聞こえないように、修平はその扉を開けた。



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