空色バルコニー
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家に帰ると、窓を全開にした。先の震災の後、エアコンをつけない習慣が抜けず、もっぱら扇風機や石油ストーブが活躍していた。

僕と父と母は横浜市の外れに住んでいる。五階だてのマンションの角部屋には二つのバルコニーがあった。一つは正面、もう一つは真横の部屋に。真横のバルコニーの幅1メートル、何のためにあるのか不思議だった。洗濯物を干すには小さすぎた。おまけにバルコニーから見えるのは隣りのマンションの一室で、約3メートルしか離れていない。陽が高くなる正午にしか光は射さなかった。
そしてそこが僕の部屋だった。

これからどうしたものか。
目の前には7月のかけらと8月が無限のように広がっていた。
うちは貧しくはないが、裕福でもない。
父の帰りは遅く、母はパートに追われている。日中は一人きりで話し相手はいなかった。

学校がないのは清々とするが、休み中何をするかが課題であった。
図書館に通うか、市民プールで芋洗いに混じるか。茂と仁士は夏期講習を受けるため、遊べるのは土日か夕方から夜にかけてだけだった。





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