★FAN★

授けられた力

目に見える暗闇…、天井に覆いつくされたその空間に、ゆったりと身体を起こす。


崩壊した身体は再生され、悶え苦しんだあの痛みは虚空に還っていた。火傷の痕は遺るが、身体はそれを受け入れている。消えることはないかもしれない。



ふと横に目をやると、看病していたのか、ヤンクスにリル、メイリンが床に毛布を敷き、その上で寝ていた。


あれから何日経ったのか…

夜に輝く月の光が眩しく見えるほど、暗く一人で無駄な思考を巡らせてしまう。一体…、俺は何なのだと…。



起こさぬようにベッドから降り、一人月明かりの闇に身を晒す。風は気分転換には心地よく、暗い思考は流れ去っていく。





あの後どうなったのだろうか…、呻き声が聞こえた後、意識は失くなっていた…。この身体も…、普通とは考えられない速さの回復を見せている。

だが…、皆無事だっただけよかったと思う。あれに比べれば…。




月の光を見上げた時、後ろの足音に耳が動いた。ゆっくりと後ろを振り向くと、フードを被った者が風にマントを揺らしながら立っていた。口元には笑みが浮かぶ。


「鍵を開けたようですね…、リオン…ギィス。

まだ獣に振り回されているだけのようですが…」




初対面にしては、リオンの事を知りすぎている。正体を明かした時に言う『預言者』もあながち嘘には聞こえなかった。

あの後の事を口にする。

ヤンクスが一瞬でとどめを刺し、リオンを担いで直ぐさま医者を呼び…。



「光が目覚めし時、闇は動く…。この先、険しい道が待つだろう」



その言葉には力があり、だが意味は知らず、それは未来だと自ずが知る。



「待て!どうしたらあの力を操作出来る!!」

「力を求めぬ事、それが何れ求めると知る。

そして…、その先を知ることが、理を創る。理は智を創り、力へと発展する。それが『アマテラス』、今は精進することが、一つの道を示すだろう」



不可解に謎めいた詞は、散り逝く風が吹き抜けた跡を残す。目の前で消えた『預言者』は、謎掛けを授け、リオンは何事もなかったように時を流した。

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