悪魔ニ花束ヲ

「…って」

右の瞳が細まって、やっと離れた口元が透明な糸を引く。それを赤い舌先がなぞって、微笑を浮かべる灰原。僅かに潤んだ瞳にあたしも流石に頭がおかしくなったのかと思う位、壮絶に綺麗だ。

「生意気だね?」

そんな言葉を不機嫌そうに飄々と吐くこの男を、殴り飛ばしても宜しいですか。

あたしは無表情で、唇を噛んだ。まだ、感触が残る。腕でガシガシと唇を拭って、拭って、拭って、

「何してんの、血出るよ」

その腕を掴まれるまで拭う。まだ、感触が落ちてないのに。ジンジンと擦れた唇が痛い。

「…今のはシャレになりませんよ」

本気(マジ)で。

初めて、だとか、違うとかそんなのが基準じゃなくて、


「……変態。」

「は?」

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