悪魔ニ花束ヲ

「無理です」

というか、嫌です。大体、消毒にはなりません。

そう言う筈の声は、


「んっぐ」


唇に押し付けられた程よい固さの何かに塞がれる。

「んんぅ」


間違いでなければ、あたしの超近距離には、長い睫毛に、僅かに灰色かかった透き通る瞳。


…うはぁっ!?


力を込めて突き飛ばす予定で思いきり腕を伸ばしたのに、


相も変わらず、唇は離されないまま、ギュと腕を掴まれれば、引き寄せられる胸元。


な、なぜに、


――僅かに緩んだ口の中に生温い感触が走って舌先が痺れる。


これが巷で噂の、


――翻弄されるかのように、まるで別の生き物みたいに器用に動くのは、甘いのか、



あたしは、ガチリと歯を立てた。



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