悪魔ニ花束ヲ
「あ、」
灰原が空を見上げた。ぽつり、と頬に水滴が落ちる。あたしも視線を上げて、
「「雨」」
同時に呟いた声は、絶妙に響いた。僅かに眉を上げた灰原は、一呼吸置いた後にその絵に書いたような綺麗な口元を曲げる。
「気が合うね?そんなに俺と一緒が良かった?」
「勘違い甚だしいですよ」
「幸せは貰うけど」
「へ?」
薄い口元を上げて涼しげな目がすっと細まる。その妙に色気のある表情に、通常では拝めない悪戯っ子みたいな笑顔。
「あれ、あのもしかして、それ」
言葉が被った時に『幸せとーった』なんて弾む声でいいながら使う可愛いらしい迷信めいたやつだったり、しますか。
「…なに」
しまった、とでも言いたそうな、少し照れた灰原。やば、ツボに入りそうだ。
「ふ、」
思わず笑ったあたしが不愉快だったのか灰原は眉を寄せたけど、不思議なことに不機嫌さは感じられない。