強引男子のイジワルで甘い独占欲
「あ……はい。母方のいとこです」
「なにか聞いてないの? 三坂さんとの事」
「あまりそういう話しないので……」
「そうなの。残念~」
本当に残念そうに肩を落とした小谷先輩に作り笑いを返してから、席を立ってオフィスを出た。
そして歩きながら異様にドクドクと波打っている脈に、急に慎司の名前が出てきたからだと理由をつけた。
だって、もうそこまでこだわっているわけではないし、仕方ない事だって思うようにもしているし、実際そう思えてきているのも強がりじゃない。
だから、動揺してしまったのはあまりに急だったからと……あとは、噂になんてなってるからだ。
私と付き合ってきた二年間、一度も噂になった事なかった。
なのに、朋絵と付き合ってすぐに噂になるなんて。
私への想いは隠し通せるくらいのモノだったのに、朋絵へのそれはそうじゃないって事なんじゃないかと考えてしまった頭をぶんぶん振った。
最近はどうしても朋絵と自分を比べる癖がついていて困る。
今まではそんな事なかったのに、慎司との事があってから――。
「佐野」
もやもやとした薄黒い感情に眉を潜めていた時、後ろから声をかけられた。
振り向くと黒いつなぎ姿の眞木がいて、その顔を見てなぜだかホっとする。
私にとって眞木は意地を張らなくていい相手だからだろうか。
隣に並んだ眞木の手には、いつもお弁当を入れているトートバックがぶら下がっていた。