真紅の空



*


「由紀!暁!」



また、仁の声がする。

目を上げると、そこは仁の家だった。


古風な和室。
見覚えのある仁の部屋。


ああ、何?また戻れたの?
でも、暁ということは、暁斉も一緒なんだ。


そう思って隣を見ると、暁斉が立っていた。


もう呆けてはいない。
ただ、自分の右手をじっと見つめている。


「良かった。呼んでもどっちも返事がないからびっくりしたよ。
 もしかして、あっちに行ってたとか?」


「仁……」


仁は考え込むように視線を彷徨わせると、腕を組んだ。
そしてしばらく口を動かしている。


「本当にタイムスリップってあるんだな。
 びっくりだよ。
 で、今はこっちに戻ってきてるってわけだろ?」


「仁、信じてくれるの?」


「当たり前だろ。由紀の話なら俺は信じるよ」


にっこり笑う仁。
仁の優しさに胸がチクリと痛んだ。
なんだか、居た堪れない。


「ねぇ!」


はっと気付いて、暁斉の手を掴んだ。
暁斉は驚いて瞳を揺らす。
あたしは暁斉の手を触って口を開いた。


「傷が、どこにもない」


傷だらけのはずの手がとても綺麗だった。


前に戻ってきた時にはそんなに気にならなかったけれど、
戦から帰ってきた暁斉に触れて
その手に傷が沢山あることを知ったからか、
妙に綺麗な手にどこか違和感を感じた。


それからはっとして自分の頬に触れてみた。


傷が、ない。


あたしの矢傷もなくなっていた。


どういうこと?この時代に戻ってくると、
なかったことになるの?


< 101 / 123 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop